1.QCDとは?

QCDとは、元々は製造業の生産管理において重要な三要素Quality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期)の頭文字をとって使われている言葉です。昨今、業界を問わず、指標やフレームワークとして使われています。ソフトウェア業界でも同様に重要視される指標とされています。

Quality(品質)とは、製品やソフトウェアが顧客のニーズや期待を満たす度合いを指します。Quality(品質)が高ければ、顧客の満足度があがり、リピート購入やポジティブな口コミにつながります。
Cost(費用)とは、製品やソフトウェアの提供にかかる費用を指します。Cost(費用)を低く抑えることができれば、その製品やソフトウェアは類似の他の商品やサービスよりも市場での競争力が上がります。
Delivery(納期)とは、製品やソフトウェアが顧客に届けられるまでの時間です。
Delivery(納期)が早ければ、製品やソフトウェアを顧客が早く受け取ることができ、満足度の向上に貢献します。また、企業同士の取引においては、Delivery(納期)を守ることは、信頼関係の構築に役立ちます。
QCDの評価は品質、費用、納期を総合的にみて判断することになります。もちろん、最高の品質のものを、最も費用をかけずに、最短で納品できることに越したことはありませんが、実際にはそうはいきません。どれか一つの要素を高めようとすると、ほかの要素が低下する傾向にあるからです。例えば、納期を早めようと、人員を増加するとコストが増加します。3つの要素は相互に関係しあうものということが重要なポイントになります。QCDを改善するときには、どれか一つの要素だけにとらわれるのではなく、全体のバランスをみることが大切です。

2.各要素の優先順位

QCDは、Q(品質)を最も重要視する考え方がベースとなり、改善や向上に取り組みます。壊れた商品を買う人がいないように、品質が顧客のニーズを満たしていなければ価値を提供したことになりません。品質が下がると、顧客離れにつながり、費用も時間も確保できなくなってしまう悪循環につながる恐れがあります。費用、時間がかかったとしても顧客に満足してもらえる品質のソフトウェアを開発することが最優先となります。ただ、過剰に品質を求めたとしてもQCDの改善につながらない場合があります。例えば、電化製品に顧客が使いこなせない機能が多くついていたとしても、顧客の満足度の向上にはつながりません。
品質の次に費用と納期のどちらを優先するべきかについてですが、これは臨機応変に対応していく必要があります。顧客の要望などの外的要因や自社のリソースなどの内的要因などによって、費用と納期のどちらを優先するべきか変化します。顧客の要望で、納期が後ろ倒しになっても構わないから、費用を抑えるようにと望まれることもありますし、法改正に合わせたソフトウェアの変更のように、納品までの期限が明確な場合は、費用がかかっても納期を優先してソフトウェア開発に携わることになります。
また、QCDの改善や向上において、見落としがちな点として、現場からの意見を十分に吸い上げきれておらず、QCDの改善活動に理解が得られないということがあります。QCDの改善は全社を通して行われることを忘れないようにしましょう。

3.QCDの関連語

3.1 QCDS

QCDSは、QCDにService(顧客対応)を加えた指標です。S(顧客対応)は顧客へのサービスやサポートを指しています。顧客へのサービスや製品の提供期間が長期にわたる場合はこの指標が重要になります。QCDSでも優先されるべきは品質です。品質が担保されていると不備や不明点が少なく、顧客対応への工数を減らすことができます。

3.2 QCDF

QCDFは、QCDにFlexibility(柔軟性)を加えた指標です。Flexibility(柔軟性)が良い状態とは、状況変化への柔軟な対応力があり、顧客のオーダー変更に十分に対応できる状態を指します。QCDFにおいても、基本的には品質が優先されますが、顧客と柔軟にコミュニケーションをとりつつ、成果物を仕上げていくことが求められます。

この他にも建設業界で用いられる、周囲の環境配慮や負荷を考慮することを指すEnvironmentを含んだQCDE、QCDEに加えて安全性、安全性確保を指すSafetyを含んだQCDSEなどもあります。

4.QCDの改善方法

ここでは、QCDを改善するための4つのステップを紹介します。

4.1 ステップ1 現状把握

現状のプロセスや業務における課題を把握します。現場社員から、アンケートやヒアリングを行い、QCDに関わるものに限らず、可能な限り広い範囲で課題を吸い上げます。そして、吸い上げた課題がQ(品質)、C(費用)、D(納期)のどれに関係するかで分類します。そして、課題に優先順位をつけます。また、効果を検証するための指標を設けます。

4.2 ステップ2 改善策検討

ステップ1で見つかった課題の原因を分析し、具体的な改善策を検討します。改善策にかかるコストや改善策の効果も予測します。一度にすべての改善策を実施することはできないため、効果が高いものや、経営上外せない改善策から行えるように、改善策の順位付けをします。

4.3 ステップ3 改善策の実施

ステップ2で順位付けした改善策を実行します。事前に現場社員と情報を共有し、施策実施の準備を整えます。実施後は、問題が起こっていないかどうかの確認を行います。

4.4 ステップ4 効果検証

改善策が上手く機能しているかの効果を検証します。ステップ1できめた、問題解決を判定するための指標のデータや社員からのヒアリングを行います。期待した効果が得られていないなら、改善策の再検討が必要となります。期待通りの結果を得られなかった原因を検証し、新たな改善策をつくり、継続的にQCDを高めるようにします。

5.まとめ

QCDは、Quality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期)の3つの要素からなる指標です。重要なのはQuality(品質)がベースであることで、これが満たされなければ、顧客に価値を提供したことになりません。QCDの改善は、顧客満足、企業利益の増加につながります。QCDの改善には、現状把握と施策の実施、効果検証をセットで行うことが必要です。QCDの向上は企業価値や市場価値を高めることにつながります。
 

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