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テストの自動化とは

テストの自動化とは、ソフトウェアの品質を保証するために、人間の手動で行うテストプロセスを機械的に実行することを指します。
これにより、開発プロセス全体を効率化し、品質向上を図ることができます。以下がテストの自動化の主な特徴です。

1.テストの自動化の主な特徴

➀自動化スクリプトの作成

テスト自動化では、テストケースを自動化するためのスクリプトやスクリプト言語を使用して、テストケースを実行するための手順を記述します。これにより、テストケースの繰り返し実行やテスト結果の再現性を確保することができます。

②自動化ツールの利用

テスト自動化にはさまざまなツールが使用されます。Webアプリケーションの場合には、SeleniumやCypressのようなツールが使われます。モバイルアプリケーションの場合には、AppiumやXCUITest、Espressoが使用されます。

➂繰り返し可能性と効率性の向上

テストの自動化により、テストケースを繰り返し実行し、テスト結果を一貫して検証することが可能になります。これにより、開発チームは品質を維持しつつ、効率的に開発を進めることができます。

➃早期バグ検出と素早いフィードバック

テスト自動化を導入することで、開発プロセスに自動化テストを組み込むことができます。これにより、コード変更が行われた際に自動的にテストが実行され、バグや問題が早期に検出されます。また、開発者は素早いフィードバックを受け取ることができるため、問題をすぐに修正することができます。

2.テストの自動化の利点とリスク

テスト自動化における利点とリスクを以下の表にまとめてみました。これらの利点とリスクは、テスト自動化を導入する際に考慮すべき重要な要素です。
利点を最大限に活用しながら、リスクを最小限に抑えるために、計画的かつ継続的なアプローチが重要になってきます。

利点 リスク
効率的なテスト実行と再現性の向上 導入コストと時間が必要
テストケースの網羅性向上 適切なスキルセットが必要
早期バグ検出と修正の容易化 テストスクリプトの信頼性と保守性
リリースプロセスの迅速化 適切なテストカバレッジの確保
開発コストの削減 ツールやテクノロジーの依存
自動化による継続的な品質向上 適切なリソースの確保と管理

3.テスト自動化の種類

テスト自動化は以下の3種類に分けて説明ができます。テスト自動化ツールの種類に応じて、テスト実施者に求められるスキルは異なります。以下に、オープンソース系、ローコード系、ノーコード系それぞれのテスト実施者に求められるスキルを説明します。

①オープンソース系

・プログラミングスキル

オープンソースのテスト自動化ツールは一般にプログラミング言語で記述されます。したがって、テスト実施者は少なくとも基本的なプログラミングスキルを持っている必要があります。好ましい言語は、Python、Java、JavaScriptなどです。

・テストフレームワークの理解

ツールがどのように動作するかを理解し、適切にテストスクリプトを作成できることが重要です。一般的なテストフレームワーク(例えば、Selenium WebDriver、JUnit、TestNGなど)についての知識が必要です。

・デバッグ能力

テストスクリプトやテストフレームワークのエラーを解決する能力が求められます。これには、デバッグツールの使用や、エラーログの読解能力が含まれます。

②ローコード系

・ビジュアルプログラミングスキル

ローコードツールは、ビジュアルインターフェースやドラッグ&ドロップ機能を使用してテストスクリプトを作成します。したがって、テスト実施者はビジュアルプログラミングの概念を理解し、ビジュアルインターフェースを使用するスキルが必要です。

・システム理解

ツールが提供する機能やテストフローを理解し、適切に構成できる能力が重要です。これには、システムの動作やテストの手順に関する理解が含まれます。

・トラブルシューティング能力

ビジュアルプログラミングツールでもエラーや問題が発生する場合があります。そのため、問題の原因を特定し、解決策を見つける能力が求められます。

③ノーコード系

・ビジュアルインターフェースの理解

ノーコードツールは通常、ビジュアルインターフェースを使用してテストを作成します。したがって、テスト実施者はビジュアルインターフェースを理解し、操作するスキルが必要です。

・ドメイン知識

ツールがテストを自動化するために必要なテストケースを作成するために、テスト実施者は対象システムのドメイン知識を持っている必要があります。これにより、適切なテストケースを特定し、作成することができます。

・コラボレーション能力

ノーコードツールはしばしばチームで使用されます。そのため、他のチームメンバーや利害関係者とのコラボレーション能力が求められます。

各種類の特徴、代表的なツールを分かりやすく表で以下にまとめてみました。

カテゴリー 特徴 代表的なツール
オープンソース系 プログラミング言語やフレームワークを使用して、テストスクリプトをコードで記述します。開発者はテストケースの作成から実行まで、コードを使って細かい制御を行うことができます。 Selenium
Appium
TestNG
JUnit
pytest
Robot Framework
ローコード系 ビジュアルなインターフェースを使用して、テストスクリプトをプログラミングせずに構築します。プリセットされたコンポーネントやアクションを使用して、テストケースを作成し、編集、実行します。 RanorexStudio
KatalonStudio
TestComplete
TricentisTosca
TelerikTestStudio
TestCraft
ノーコード系 ビジュアルなブロックやフローチャートを使用して、プログラミングスキルなしにテストスクリプトを構築します。ツールが自動的にテストスクリプトを生成し、編集、実行します。 mabl
TestCraft
Leapwork
Testim
Functionize
Katalon Studio(レコーディング機能)

これらのカテゴリは、プロジェクトのニーズやチームのスキルセットに応じて、適切なツールを選択する際の指針となります。

4.様々なテスト自動化ツールの比較

以下は、代表的なテスト自動化ツールを値段と性能の観点から比較した表を示します。性能に関しては、一般的な特徴や機能に焦点を当てました。価格や性能は変動する可能性があるため、最新の情報を確認することが重要になってきます。

-テスト自動化ツール一覧-

カテゴリー ツール 価格 性能
オープンソース系 SELENIUM 無料 – WebアプリケーションのUIテスト自動化において非常に強力で柔軟なツール。複数のブラウザとプログラミング言語に対応。
APPIUM 無料 – AndroidおよびiOSアプリケーションのモバイルテスト自動化において強力なツール。オープンソースであり、コミュニティサポートが豊富。
TESTNG 無料 – Javaベースのテストフレームワークで、JUnitの拡張機能を提供。パラメータ化されたテストや依存性のあるテスト、グループ化されたテストなどの機能を提供。
JUNIT 無料 – Javaプログラミング言語向けの単体テストフレームワーク。アサーション、テストランナー、テストフィクスチャの機能を提供。
PYTEST 無料 – Python向けのテストフレームワーク。テストのパラメータ化、fixtureの自動提供、拡張可能なプラグインシステムなどの機能を提供。
ROBOT FRAMEWORK 無料 – 汎用のオープンソースの自動化フレームワーク。テストケースの自然言語での記述、多彩なライブラリサポート、簡単なセットアップなどの特徴がある。
カテゴリー ツール 価格 性能
ローコード系 RANOREX STUDIO ¥768,000(税別)
(※2)
– デスクトップ、WEB、モバイルアプリケーションのUIテスト自動化をサポート。
コードとビジュアルフローチャートの組み合わせにより、幅広いテストシナリオに対応。
KATALON STUDIO 無料(基本機能)
追加機能は要問合せ(※1)
– WEBアプリケーションおよびAPIのテスト自動化をサポート。
ビジュアルテストレコーディングやスクリプトレステスト、APIテスト機能などを提供。
TESTCOMPLETE ¥330,000(税別)
(※2)
– WEB、デスクトップ、モバイルアプリケーションのUIテスト自動化をサポート。
ビジュアルテスト記録、スクリプトレステスト、スクリプトベースのテストを組み合わせた柔軟なアプローチを提供。
TRICENTIS TOSCA 要問合せ(※1) – エンタープライズ向けの継続的テストプラットフォーム。
ビジュアルテストの自動化、APIテスト、データ駆動テストなどの機能を提供。
TELERIK TEST STUDIO ¥726,110(税別)
(※2)
– WEB、デスクトップ、モバイルアプリケーションのUIテスト自動化をサポート。
ビジュアルテストレコーディング、スクリプトレステスト、クロスブラウザテストなどの機能を提供。
TESTCRAFT 要問合せ(※1) – クラウドベースのテスト自動化プラットフォーム。
ノーコードのテスト自動化、自動化されたレコーディング、スケーラビリティーが特徴。
カテゴリー ツール 価格 性能
ノーコード系 MABL 要問合せ(※1) – AI(人工知能)によるテスト自動化を提供。
ユーザーエクスペリエンスの監視、テストスクリプトの自動生成、不具合の自動検出などの機能を提供。
LEAPWORK 要問合せ(※1) – ノーコードのテスト自動化プラットフォーム。
ビジュアルテストの作成、データ駆動テスト、Webおよびデスクトップアプリケーションのサポート。
TESTIM 要問合せ(※1) – AIによる自動テストの生成と実行を提供。
スマートなレコーディング、テストの自動最適化、品質レポートなどの機能を提供。
FUNCTIONIZE 要問合せ(※1) – AI(人工知能)によるテスト自動化を提供。
ノーコードテストスクリプトの生成、スマートなセレクタ、自動テストメンテナンスなどの機能を提供。

(※1)規定のプランがなく、必要な機能に応じて料金が変動する場合は「要問合せ」としています。

(※2)PC1台あたりの買取りライセンスとなります。

5.テスト自動化を導入する際のポイント

テスト自動化を導入する際のポイントは主に6つあります。

①ビジネスゴールの明確化

テスト自動化の導入にあたり、ビジネスゴールや期待される効果を明確に定義します。例えば、テスト時間の削減、品質向上、リリース速度の向上など、具体的な目標を設定します。

②適切なツールの選択

プロジェクトの要件やテスト対象に応じて、適切なテスト自動化ツールを選択します。ツールの機能や互換性、コスト、サポートなどを検討し、最適なツールを選びます。

③テスト自動化範囲の決定

全てのテストケースを自動化する必要はありません。導入するテスト自動化の範囲を明確に定義し、優先順位をつけます。重要度が高く、繰り返し実行されるテストケースから始めることが効果的です。

④スキルの評価とトレーニング

テスト自動化を導入するために、チームのスキルセットを評価し、必要に応じてトレーニングや教育を行います。プログラミングやテスト自動化ツールの使用方法に関するスキルを向上させることが重要です。

⑤段階的な導入と評価

テスト自動化を段階的に導入し、効果を評価します。初期段階では小規模なプロジェクトやテストケースから始め、成功事例を積み重ねながら徐々に範囲を拡大していきます。

⑥ フィードバックと改善

テスト自動化を実施して得られたフィードバックを活用し、プロセスやテストスクリプトの改善を行います。定期的なレビューや振り返りを通じて、持続的な改善を促進します。

6.まとめ

テスト自動化は、テストプロセスを自動化することで、手動で行うテストケースの実行やテスト作業を自動化して、開発プロセス全体を効率化し、品質向上を図ることができます。具体的なビジネスゴールを設定して、プロジェクトの要件に応じて適切なテスト自動化ツールを選択し、小規模なプロジェクトから始めて段階的に範囲を拡大することが重要になってきます。段階を踏んで、効果を評価して改善を行っていくことでより良い品質を保証していきます。

株式会社GENZでは、豊富な知識と経験をもとに、最適な自動化ツールの選定から導入・運用までをサポートいたします。ソフトウェアテスト・品質チェックでお困り事は、どんなことでもお気軽にご相談ください。

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